デフとLSD

LSDの説明をするには、まずディファレンシャルギア(デフ)の働きから説明しなければなりません。

ここでは一般的なFR(フロントエンジン、リアドライブ)の車を例に挙げて簡単に説明します。

内輪差と外輪差

前述のデフ、またはLSDは上の図のような経路でミッションからの動力を車軸に伝える部分です。

コーナーでは外側の車輪と内側の車輪で外輪差、内輪差が生まれ、これによって内側の車輪が空転をしようとします。

もし、デフが無く、後輪が左右とも全く同じ動きをしていたとしたら、操舵方向内側のタイヤに、外側のタイヤよりも捻じれによる摩擦が大きく働き、コーナーが曲がりづらくなります。

構造で見るデフとLSD

では、デフがどのように働いているかを説明します。
平地での直進状態では、上の図のディファレンシャルピニオンギアは動かず、左右の車輪に5:5の割合で動力が伝えられます。

しかし、コーナーなどでは、曲がる方向の車輪により多くの負荷が掛かるため、ここで初めてディファレンシャルピニオンギアが働き、左側の車輪のが少なく回転し、右側の車輪のが多く回転するように働く訳です。

しかし、当然駆動力は荷重の少ない車輪に逃げてしまい、スポーツ走行などにおいてはコーナーのコントロール性が失われてしまいます。

続いてLSDです。

デフが「差動装置」というのに対して、LSDは「差動制限機構つき差動発生装置」と言います。

最も一般的な「多板クラッチ式LSD」について説明します。

では、どういう仕組みかというと・・・

まず、プロペラシャフトから入力された駆動力がデフケースと一体のプレッシャーリングを回転させます。

そして、コーナーなどで左右の車輪の回転率が変わると、現状維持を保とうとする車軸と、プレッシャーリングとの間に力の衝突が起こります。

この力の衝突により、初めてピニオンギアとプレッシャーリングのV字に切られた溝がミートします。

ピニオンギアとプレッシャーリングの溝がミートするとプレッシャーリングはカム作用により、クラッチプレートをミートさせ、その力はドライブシャフトを介して車輪に伝えられます。
サイドギヤはクラッチプレートを介して繋がっているので、左右のサイドギヤの噛み具合はカム作用に応じて割り振られることになります。

結果として、デフ機能を制限し、コーナーでも駆動力を、より確実に車輪に伝える、というシステム、これがLSDです。
よって、デフよりもコーナーでの限界速度域は大きくなりますが、コーナーでタイヤがデフよりも粘ってくれるようになりますので、タイヤ寿命や乗り心地はデフよりも劣るというデメリットもある訳です。

お分かり頂けたでしょうか。

コーナーリングを考えたカスタムをするなら、まず最初にLSDから・・・と言っても過言ではないくらいに効果を発揮するパーツです。